簡単に言うと
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腿上死点(膝の最上位置)から腿下死点(膝の最下位置)までの間の腿の運動のスムーズさを測定します。
- より低いスコアほど、効率の良い腿の動きを示しており、ゼロが最も効率が良いスコアとなります。
- スコアが低く腿の動きがスムースなほど、無駄なエネルギー消費が少なくなると考えられます。
なぜ Leg Smoothness が重要なのか
自転車のペダリングは、主に下肢において、シューズ内の足裏とクリートを介したペダルの間の接点、臀部とサドルの間の接点の二種類の支点とした繰り返し動作が基本となります。その2点間にある関節、すなわち股関節、膝関節、足首関節のそれぞれの屈曲・伸展の連係動作が、ペダリング中の下肢フォームを主に決定し、効果的なパワー出力実現につながります。
関節の動きは屈曲と伸展が中心ではあるものの、支点をから離れる関節ほど自由度が大きくなり、内転・外転や内旋・外旋といった異なる軸上の関節運動も可能になります。ここで、効果的なパワー出力が生みだせるフォームにおいては、個々人の筋力・筋肉バランスに応じて、これら異なる関節運動が最適な連携が起きていると考えられます。
一方で、過剰な負荷などのため適切なフォームが維持できない状態では、これらの関節の連係運動にも変化が応じることが一般に確かめられています。一つ顕著にその差異が表れるのは腿の動きであり、主に股関節や膝関節において、屈曲・伸展以外の内転・外転や内旋・外旋の動きのウェイトが大きくなることで、非効率的な腿の運動が生じることがあります。
そこで、腿の動きを定量して観測することが大切になります。特にペダリングサイクルにおいては、パワーが主に生み出させる区間である腿上死点から腿下死点までの動き、つまり上から下方向・地面方向への動きの間に注力することが重要とされています。
動きの効率性、つまり、より少ないメタボリックエネルギー消費で、最大の幅の動作を生み出せたかどうかを示す一つにスムーズさという指標が挙げられ、Leg Smoothness MPIはそのスムーズさを定量的に評価します。特に自転車のペダリングでは、上記の通り、腿上死点から腿下死点までの動きに注目した評価を行います。
Leg Smoothnessの値について
- スムーズさを表現するものとして、ジャークもしくは躍度と呼ばれる加加速度(加速度の時間微分)と呼ばれる物理指標があります。Leg Smoothness MPIはそのジャークを用いてスムーズさを定量的に評価し、スコアとして示します。ジャークが大きくなるほど、スムーズさはなくなり、動きに非効率性が生まれます。ジャークは身体運動のみならず、乗用車などの移動体の中で人間が感じるスムーズさの指標としても一般的にも用いられており、ランニング等自転車以外の身体運動の効率性を計測することにも利用されています。なお、下記の図表のよう、膝近くの腿前面に貼り付けるセンサーを利用するため厳密には下方向ではなく、股関節周りの水平軸上の回転方向へのジャークを計算しています。
また、自転車ペダリングにおける腿動作のスムーズさは、ケイデンスの違いやパワーの大小によらない正規化した指標で評価されるべきです。LEOMOのLeg Smoothness MPIは、これらの条件変動を考慮した、つまりこれら変動に影響を受けないスコアになっています。したがって、異なるケイデンス区間や異なるパワーメニュー間での、スコアの相互比較も可能になり、条件によって影響を受ける(もしくは受けない)フォームの確認指標にもなります。
例えば、低いギアによる低負荷・低パワー出力状態のスムーズさと、高いギアによる高負荷・高パワー出力時のスムーズさを同じ尺度で比較できます。これにより、徐々に、低い負荷から高い負荷、低パワーから高パワーにあげていくランプアップメニューにおいて、どこまで腿動作のスムーズさを保てているかというのを定量的に評価するのにも、Leg Smoothness MPIのスコアを活用することが可能になります。
Leg Smoothness |
Level |
Visual Reference |
---|---|---|
< 5% |
非常にスムーズ |
不必要な加減速のない非常に自然な動き |
5 – 10% |
スムーズ |
自然な動き |
10 - 15% |
普通 |
若干非効率な動き |
> 15% |
スムーズではない |
非効率な動き |
注:路面の状況などにより通常のペダリング動作以外の振動が腿・膝に伝わると正しいスコアがでないことがあります。
MPIの背景
ここでは、サドルより上の上体が固定できるという前提で、関連するMPIがどうして重要なのかを説明します。
まず、ポステリオール筋肉群を効果的に使いこなすことができたとしても、最終的には自転車に伝えるパワー出力はペダルになるので、ポステリオール筋肉群からペダルまでにつながる一連の力を伝える動作がとても大切になります。ここで重要になる動作が、トリプルエクステンション(Triple Extension)です。股関節で発生した出力を膝関節、足首関節さらにはペダルシャフトという2+1関節を通してペダルに伝える必要があり、これら3つの関節の使い方、つまり伸展・屈曲・ロックの連係動作を指します。
トリプルエクステンションの概念自体はバイオメカニクスにおいても難しく捉えるまでもありません。関節を伸展、ロックすることで、ポステリオール筋肉群から、大腿部のハムストリング、ふくらはぎ後部のヒラメ筋を通じて、ペダルまで効果的に力を伝えようというシンプルなアイディアです。各関節がバラバラに動くより、股関節から膝、そして足首へ順に連動して伸展するほうが無駄なくより多く力が伝わります。実際、膝より上部分で作られた力が、足首に伝わる力は、連動させたときとバラバラの時で6倍の違いもあるという研究結果もでています。臀部から大腿後部の筋肉は身体の中でもより多くを占めますので、自転車によらず、この部分を伸ばし切ることは、あらゆる運動において大切なのは分かると思います。
つまり、股関節が伸展している最中に膝関節と足首関節はロックしているか、もしくは更に伸展させることで力を加える事ができれば、ポステリオール筋肉群を最大限利用できているといえるでしょう。しかし自転車においては、股関節伸展によって腿が下がっていきますが、この間に膝関節や足首関節が屈曲すると力を逃してしまうことになります。もし、これら関節を屈曲させてしまうと、MPIの値に大きな変化が見えてきます。具体的には、DSSは大きくなり、FAR、FAR(Q1)の測定値も大きくなる傾向があります。
これら3つのMPIでも、ペダリングにおけるトリプルエクステンションの効率性を測ることは可能ですが、足センサーを利用していることから、つまり、腰部からみると、股関節、膝、足首と3つの関節を介しているので、スコアには若干他の要因も関連付けられます。非効率なトリプルエクステンションが原因でなくても、これらMPIの数値が大きくなる可能性はゼロとはいえません。
そこで着目したのが腿の動きの加速度変化というわけです。最大出力を出す関節により近い腿の加速度変化を見ることで、より直接的にトリプルエクステンションの評価を行います。いずれかの関節が屈曲して力の伝達に無駄が生じて力が逃げてしまうときは、腿の動作は急な加速をすることになります。逆に必要以上に伸展して股関節の伸展を疎外する場合は、腿動作は急な減速となって現れます。いずれの場合も、3つの関節の効率的な連動ができていない状態になり、結局はせっかくポステリオール筋肉群で発揮された力が効率よく伝達できていないことになるのです。
Leg Smoothenessは、Leg Smoothnessの値についてで示されているよう、腿の加速度変化をケイデンスやパワーの変動によらず平均統一しながらスコア化しているので、一般化したトリプルエクステンションの評価指標になるといえます。
センサーの位置
- 大腿の表面に取り付けます。大腿の横には貼らないでください。
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両面テープを使うか、ジャージに挟むと安定します。
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装着位置が膝に近くても股関節に近くても問題ありませんが、10cmぐらいは離したほうが良いでしょう。
リアルタイムデータ解析
Leg Smoothness はアクティビティ中にリアルタイムで見ることが出来ます。
また、コーチは LEOMO LVS でMPIと動画を重ね合わせて記録し、見ることができます。
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